工房作品 二〇〇四 
その二

皇紀2664年に私の工房で魂を込めて一つ一つ攻玉し
生まれた玉達をご紹介致します。





一、奴奈川硬玉鰹節型大珠
(全長12.2p)

奴奈川にて縁あって入手した硬玉を打ち割ったところ、あまりに美しい
オンファス輝石の脈が現れました。この色合いを損なわぬよう細心の注意を払い
縄文中期に関東を中心に広く分布する鰹節型大珠を砥ぎ出しました。
この大きさは今までの大珠の中で最大の大きさを誇ります。
手磨きの限界まで攻め込みたいへん美しい艶を出すことが出来ました。
長い時間がかかりましたが、艶やかな雪原に映える明緑は息を呑むほどです。
この玉には名前があり命名「キムンカムイ」(山の神)
別名
「黒姫大神」といいます。

千葉県、S様所有






二、奴奈川硬玉異形垂玉
(全長4.56p)


作品一と同じ原石から生み出した縄文前期の異形垂玉です。
前期縄文の息吹を胸に、作品一と同時に攻め込みました。
穿孔は両側棒錐穿孔で魂を入れ込みました。
あまり整わない小さな姿ですが、前期縄文人の心で砥石と向かい
たくさんの「威」を封じ込めました。







三、奴奈川硬玉三角型大珠
(全長6.88p)


本品はXX川にて入手した硬玉から砥ぎ出した岩手県を中心に分布する三角型大珠です。
玉作 工人も初の挑戦でしたが、「威」に助けられ生み出すことが出来ました。
その色合いは白と淡い緑色、左側部には透明度の高い曹長石の脈があり
独特の雰囲気を出しています。
穿孔は片側管錐穿孔で、穿孔部修正をかけました。
原石の組成も相まって、たいへん美しい肌に仕上がりました。
この玉にはM様命名の名前があり命名「カムナガラ」といいます。
栃木県、M様所有







四、奴奈川硬玉丁字頭大勾玉
(全長5.44p)

古墳時代、大和玉作部の工人が大王に捧げる為に生んだであろう
威風堂々とした丁字頭勾玉を砥ぎ出しました。
淡い緑と白の織り成す世界はまさに大王の玉です。
技術的には両側穿孔、研磨は「龍闕」譲りの技法を用い極めて美麗です。
勾玉佩用文化末期もっとも完成された姿を持つ、我が国の大勾玉です。
この玉には名前があり命名「神挂甲」(かむかけよろひ)といいます。
千葉県、M様所有






五、奴奈川硬玉縄文大珠
(全長6.40p)

本品は小滝川採集の白い硬玉原石を攻玉した大珠で、真っ白い硬玉
の表面に流れるかのように緑の色が入っています。
穿孔は片側棒錐穿孔、研磨は従来技法ですが輝きは十分です。
素朴な色合い、原石の形を生かした姿に大いなる力を感じます。
この玉には名前があり命名「渓壑」(けいがく)といいます。
千葉県、M様所有







六、奴奈川硬玉古式勾玉一対
(全長3.8p、3.66p
御統攻玉第四弾!
本品は姫川採集硬玉原石から生み出した勾玉で、緻密な結晶粒から出来ています。
透明度もたいへん高く「威」の強さを感じます。
攻玉中に感じたのは「玲瓏」を護る鳳、奴奈川の空を翔る神の鳥です。
その大いなる空の「威」で「玲瓏」を守護します。
この玉には名前があり命名「高志の雙鳳」といいます。
千葉県、S様所有






七、奴奈川碧玉縄文異形垂玉
(全長4.62p)

奴奈川の碧玉を攻玉した垂玉で、縄文の「威」を胸に一気に攻め込みました。
この作品は玉を固定し、砥石を動かす技法で生み出しました。
深い緑の奥から縄文人の声が聞こえて来るようです。
異形垂玉は出土例も少ないものですが、上代の首長が佩用したであろう形を、
上代玉作 工人の魂を用いて封じ込めました。






八、奴奈川赤玉勾玉
(全長4.13p)

奴奈川赤玉(鉄石英)を攻玉した古墳時代の勾玉です。
その形は大和玉作部工人に特徴的なC型の艶姿で、
近畿地方の大きな古墳などから副葬品として出土する形状です。
技法的には穿孔(魂入れ)は平錐打撃穿孔、研磨は硬質砂岩で行いました。
その肌はあくまでしっとりとして絹のような滑らかさです。
この玉には名前があり命名「紅絹」(こうけん)といいます。
千葉県、S様所有






九、奴奈川硬玉異形勾玉
(全長4.36p)

この玉の手本になったものは、北海道の縄文遺跡から出土したものです。
奴奈川硬玉を用いて再現いたしました。
攻玉中は広葉樹林に差し込む日光、林を抜ける風と土の匂いを感じました。
その独特な形、二つの穿孔とあいまって独特の「威」を放っています。
森の民の魂をこの形に封じ込めました。
この玉には名前があり命名「林壑」(りんがく)といいます。







十、奴奈川青硬玉異形垂玉
(全長3.03p)

極めて貴産な奴奈川青色硬玉を縄文の「威」に従って垂玉に砥ぎ出したもので、
美麗な青色を持っています。日光を浴びて輝く姿はまさに縄文の息吹です。
技法的には両側棒錐穿孔、成形は奴奈川硬質砂岩で行いました。
海の「威」と、山の「威」を併せ持つその姿をごらんください。
この玉には名前があり命名「高志峰」といいます。





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