奴奈川の玉匠

玻璃玉作




我が国の弥生時代中期前半~中頃(1世紀から3世紀)にかけて
出現し始める「ガラス勾玉」その形状や色合いは様々です。

古式玉匠として上代より使われし玻璃材による勾玉再現に十数年前から
取り組んでいますが、未だ完全な再現技能の確立に及んでいません。

最大の難関は鋳造鋳型の再現です。
今まで様々な材で試してまいりましたが、現代と異なり温度管理が
思うようにならない古式の場合、鋳型と材の組み合わせ、
木炭炉形状や温度維持に非常に繊細な配慮と経験が必要で、
極めて高度な特殊技能を用いた、古の工人の技の高さがわかります。

様々な石材鋳型、土器作技能を用いた粘土鋳型、鏡作技能の真土鋳型
等々で行いましたがガラス溶解の高温に耐えられず、結晶変態を起こしたり
水蒸気爆発を起こしたりして失敗の連続でした。

あれこれと悩んでいる中、あるきっかけで新たな石鋳型を用い
再現できる可能性が出てまいりました。

この項ではその一連の流れをご紹介させていただきたく存じます。
成功するとは限りませんが・・・・・。



鋳型作成

弥生時代の出土遺物である鋳型を見ると金属鋳造は砂岩の鋳型。
ガラス鋳造は砂岩と粘土鋳型が存在します。

今回私が試行するのは火山の噴火と共に降る火山弾。
この石は火山噴火と共に生まれ1000度を超える熱を経験しています。
面は荒いのですが整形後に粘土と炭を混ぜた土で肌を整える事で
玻璃材による勾玉の鋳造に使えると判断しました。


榛名山火山弾

古墳時代、495年6月噴火した際に飛んだ真っ赤な火山弾。
現在は非常に温和な表情です。




この火山弾に柏手を打って手を加え、勾玉の鋳型を砥ぎ出します。


平面出し工程
火山弾を火回りが良い様に平面に切出します。
この厚さがが極めて重要で、材の溶解に大きな影響を与えます。






線書き工程

目標とする玉の形状を書き出します。
極力、材への炎当たりを均一化すべく腹にも丸抉り入れます。


  


出し工程

砥石と鋼を用いて掘り込みます。
重要になるのはその深さと抜き勾配で、ここで今まで失敗しました。
特に抜き勾配は重要で、溶解後のガラスの表面張力を考慮します。




型出し完了

表面の粗さを粘土と石切子、川砂を混ぜたもので覆います。
完全に乾燥させ、藁灰と炭を混ぜたものを水溶き塗布し
鋳造前の肌を仕上げた後、余熱炉で温度を上げてから材を入れます。


  


現代の道具を用いて再現すれば容易に出来るのだと思いますが
私の目標は古の技能再現と伝承でございます。

あくまで可能な限り古の材と技法にこだわります。


ありがとうございます。

「風雨同舟 迎接挑戦」
玉作 工人 拝





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