工房作品 二〇一三 


皇紀2673年、玉作 工人は復活をいたしました。
海外生活で疲弊を極めた魂を呼び覚まし、老体を奮起して再起動です。

奴奈川の原風景、そして我が国の美しい自然、文化を守りつつ「玉作」
という日本文化の源流を守り続けて行こうと思います。

大神神社、奴奈川神社、貫前神社の御札に護られながら
匠の手仕事のみで魂を入れ込まれた作品をどうぞご覧ください。





一、奴奈川軟玉双頭縦列異型勾玉
「神意支都久辰為命」
(おきつくしゐのみこと)
[全長65.0ミリ、最大幅13.7ミリ]

奴奈川軟玉より砥ぎ出した双頭縦列異型勾玉。
蒼い流水紋、その姿は海神の「威」を持ち、太陽に映える美しさは大海原の海流の様です。
片面に騒ぎ立つ深山の森を持ち、その双方が奏でる「威」はまさに「静と動」です。

  



二、奴奈川硬玉「の」字状石製品
「神森威」
[全長43.0ミリ、最大幅14.9ミリ]

奴奈川硬玉より縄文時代の「の」字状石製品を砥ぎ出しました。
この原石は、奴奈川のとある場所で表面採集した原石で、
縄文人が河川より運び上げた太古の翡翠です。
奴奈川の縄文人に見つけられ、5000年以上経過し現代で玉となりました。
丸くコロッとした姿ですが、上部に圧砕状組織を持ち、
身から発する迫力はまさに縄文の「威」です。

  

  





三、奴奈川軟玉丁子頭大勾玉
「神甕襲」
[全長47.2ミリ、最大幅14.7ミリ]

青緑色の奴奈川軟玉より古墳末期の丁子頭大勾玉を砥ぎ出しました。
全身に半透明の流水紋、肌目は独特の脂肪光沢を放ちます。
穿孔は片側打撃穿孔、硬玉片にて丁子を刻み込みました。
強い「威」を持ち佩用されていたであろう、奴奈川の堂々とした大勾玉です。

  

  



四、奴奈川圧砕硬玉勾玉
「神雷」
[全長45.3ミリ、最大幅13.7ミリ]

奴奈川圧砕硬玉から生み出した弥生期の古式勾玉です。
この独特の文様は、地下深くで一度破砕した硬玉が再び変性作用で固まる際に
硬玉の隙間に角閃石類が入る事で、独特の網目模様が生まれます。
独特の姿からは荒々しい大地の「威」が溢れ出る猛々しい玉になりました。
栃木県、M様所有
 

栃木県、M様からいただいたご評価とご感想。
(M様掲載ご了解済です)

それは正に神の雷でした。

届いた荷物の梱包を開き「神雷」を手に置いた時に、
落雷した時に感じるような衝撃が体を突き抜けて行くのがわかりました。

恐る恐る首に「神雷」を掛けてみると全身に痛みが走りました。

目を閉じて呼吸を整えて瞑想をしていると痛みはゆっくりと消えて行き、
絵の具で例えると赤と青がゆっくりと混ざって行く感覚になり
最後は柔らかい水の流れに包まれていました。

大好きな奴奈川の川と海です!

荒々しく地響きを上げる大波、大雨と共に龍が天と地を行き来する雷、何もかも飲み込んでいく濁流。
総ての者を受け入れてくれる柔らかい海、大地を潤す恵みの雨、澄み渡る清流。
相反しますが、きっと一つでも欠けてしまったら調和がとれなくなってしまうのでしょう。

「神雷」は正に森羅万象の理を示しているような気がします。

緑、白、黒が激しく入り乱れておりますが裏を見ると
緑と白が多くなり黒が逆に柔らかさを引き立てています。
そして勾玉と言う世界に包まれている・・・。
掲示板にも書きましたが「神雷」は本当に一目惚れでした。

暇さえあれば「神雷」のことを考えており昔から言われている不治の病にかかっておりました。
玉作さんが磨き生み出した玉を胸元に飾ると、玉を通して自分と世界が繋がっている、
人間は特別な存在ではなく他の動物と同じようにただ、世界と共にある存在だと言う事を強く感じます。

それは形式化する前の古代神道…西洋で云うシャーマニズムに近いものかもしれません。
それは何もかも便利になったこの時代に機械ではなく、魂を込めて全て手で磨き出す
古代の息吹きである玉作さんだからこそ出来る事かも知れません。

最後に「神雷」をお譲りいただき本当にありがとうございました。
先程まで大雨が降り雷が鳴っておりました。
今、神雷は胸元にあります。

縁に感謝。

Mさん大変ありがとうございます。
奴奈川の玉匠として今後も精進いたします。

「風雨同舟 迎接挑戦」
玉作 工人  拝






  
五、紫水晶勾玉
「紫電」
[全長36.5ミリ、最大幅13.8ミリ]

我が国の紫水晶より砥ぎ出した大和玉作部型勾玉です。
十分な身幅と強い屈曲、締った尾、最末期型の端正な形状です。
日光下で煌く石目、その反射光はまさに一瞬の煌き、紫電の「威」です。

技法は片側回転打撃穿孔、整形は押圧剥離の後、砥石川砂整形。
今回はカーボランダム等は用いず、完全な大和玉作部の技法に拘り、
古代の絹目光を生み出す事に成功しました。
群馬県、T様所有
  

  

六、奴奈川硬玉異型勾玉
「高志の白龍」
[全長34.8ミリ、最大幅11.2ミリ]

奴奈川硬玉より縄文期の獣形勾玉を砥ぎ出しました。
本作品は押上海岸転石を、古式に則り砥ぎ出した異型勾玉です。
その姿は、光を美しく通し、腹には緑の翠を持ち、複雑な曲線が織りなす
姿からは自然の「威」を否応なく感じます。
光が当たるある瞬間、この玉の側面に白龍が姿を現します。
絹目の肌、その透過度と相まって白龍と共に持たれる方を守護します。

  

     



七、奴奈川透緑閃石勾玉
「沼川の翠月」
[全長25.5ミリ 最大幅9.9ミリ
]

奴奈川清流より下賜された原石より砥ぎ出した奴奈川の月。
透過する緑に、深山にかかる月の「威」を持ちます。
その身は丸く、光には翠色で答え、独自のインクルージョンを持つ古式勾玉。
古く沼川に見られたであろう、月を感じさせます。

  

   


八、奴奈川透緑閃石勾玉
「山添の神翠葉」
[全長27.0ミリ 最大幅8.5ミリ]

奴奈川の親不知海岸より下賜された原石より砥ぎ出した奴奈川神翠。
もはやこの翠色、研磨後の絹肌は完全に神の領域です。
小さいですが、光を通したその姿は、持つ方、見る方を強引に納得
させる強烈な奴奈川の「威」を持ちます。

これが本物の「翠」なのです。
神奈川県、N様所有

       


九、奴奈川青石勾玉
「高志の蒼龍」
[全長31.5ミリ 最大幅12.1ミリ]

奴奈川青石より砥ぎ出した古式奴奈川勾玉。
流れる流水紋を持ち、その肌は有機的な艶を放ちます。
攻玉は古式に則り奴奈川式技法を用い、石の声を聞き、石目を見極め
砥石に逆らわずに手間と工数をかけ砥ぎ出しました。
奴奈川の大海原に住む青い龍の如き猛々しい「威」を持ちます。
これが奴奈川にしか無い本物の流水蒼海色なのです。

  

   


十、奴奈川大理石玉作部勾玉
官製玉作部 量産工法勾玉技法検証再現品

5世紀後半から6世紀に大和朝廷に生まれた官製玉作工房で作られ、
全国に広がった我が国最初の量産規格品です。

官製勾玉出土品

その工法は奴奈川技法とは全く異なり、如何に早く作り上げるか、
如何に同じように作るかのみに重点が置かれています。
数多くの古墳出土品を実見して技法を見極め再現に成功しました。

型出し:原石への施溝を実施、打割。
荒整形:打割原石を直接打撃加工で粗型出し。
その後、長方形に荒砥石整形。
内研磨:長方形型出原石を硬質砂岩製の断面形状□の砥石で前後研磨。
穿孔:穴明矢(金属製マイナスドライバー形状)で回転打撃穿孔。
(出土品特有の穿孔部錐脱出口の酷い破壊まで再現出来た。)
中研磨:無し
仕上げ研磨:必要最低限の表層研磨

こうして官製勾玉は大量生産され東国に運ばれました。
地方豪族従属の証として。

この玉を上記工法で作ると、完成まで一人で延べ数時間、工程分割して
多人数で量産加工した場合、一個当たりは数分から数十分だと思われます。

  


   


皇紀二六七三年作品


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