工房作品 二〇〇三 
その三


2003年に私の工房で魂を込めて一つ一つ攻玉し
生まれた玉達をご紹介致します。





一、奴奈川赤玉(鉄石英)勾玉二珠
(全長4.16、4.19p)
御統攻玉第三弾!
奴奈川の海岸採取鉄石英を攻玉した玉で、通常奴奈川で
見かける赤玉と異なり透明な石英に赤いインクルージョンが入った
珍しいものです。その秘めたる「威」で「玲瓏」を守護します。
さすがに石英、攻玉には難儀いたしましたが、
「威」の十分な勾玉になりました。
この玉には名前があり命名「高志の龍鱗」(こしのりゅうりん)といいます。
千葉県、S様所有





二、奴奈川青色軟玉大珠(全長8.20p)
奴奈川産の流水紋を伴った青い軟玉攻玉に挑みました。
 着手から完成まで足掛け2年の歳月がかかっております。
非常に強靭な結晶組成をしており、かかった手間は硬玉より上かもしれません。
見事な「脂肪状光沢」が微笑みを湛えております。
表情は穏やかさと荒々しさを持っているまさに奴奈川海神の持ち物
といえるのではないでしょうか。
この玉には名前があり、A様 命名「鳴海」(なるみ)といいます。
熊本県、A様所有
  





三、奴奈川緑色原石獣型勾玉(全長5.85p)
奴奈川の濃緑色原石から砥ぎ出した獣型勾玉です。
その原石の「威」からは強く魔除の力を感じました。
透けない緑と透ける緑のバランス、その高い密度が生み出す
猛烈な光沢と艶。獣型勾玉ならではの力を生み出せました。
この玉には名前があり、命名「山祗」(やまつみ)といいます
栃木県、M様所有





四、奴奈川硬玉勾玉(全長3.30p)
奴奈川硬玉から生み出した古式奴奈川の勾玉です。
「岬」を生んだ上代工人の気持ちでこの形を生み出しました。
白い硬玉に青の色合いが見事です。
その色合いからは奴奈川の浜に砕ける波の「威」を強く感じます。
この玉には名前があり、I様 命名「渚」(なぎさ)といいます
新潟県、I様所有






五、奴奈川青色原石大勾玉(全長5.42p)
奴奈川産青石を用い攻玉した作品で、見事な流水紋を持っています。
「トヨ」「蒼海」に次ぐ貴産な青石の大勾玉です。
古式に則り、三条の丁字を刻みました。
海の「威」の極めて強い大勾玉に仕上がりました。
この玉には名前があり、A様 命名「勇魚」(いさな)といいます。
熊本県、A様所有






六、奴奈川硬玉勾玉(全長4.10p)
奴奈川産硬玉から砥ぎ出した古式奴奈川勾玉で
その形は非常に端正です。
自然の緑色が奴奈川の渓流の残雪から萌え出る緑を感じさせます。
白、緑、黒、のバランスも良い勾玉になりました。
この玉には名前があり、K様 命名「陽玉・吉祥猿田彦」といいます
埼玉県、K様所有





七、奴奈川硬玉大珠(全長7.93p)
奴奈川の川底にあった硬玉、軟玉、蛇紋岩を含む原石から砥ぎ出した
大珠で、その艶肌はたいへん美しいです。
硬玉の明るい緑、軟玉の流水紋、鶯色の蛇紋岩と
奴奈川の魅力を全てまとった大珠です。
この玉には名前があり命名「ワッカウスカムイ」(大川の守神)といいます。
千葉県、S様所有





八、奴奈川軟玉異形勾玉(全長4.05p)
この異形勾玉は縄文の「威」のみによって砥ぎ出した魂の形です。
奴奈川軟玉の流水紋が実に綺麗です。
技術的には、穿孔部を管錐により十字交差穿孔を施し、
現在の玉作 工人穿孔技術の最高峰です。
この玉には名前があり、A様 命名「案山子」(カガセ)といいます。
熊本県、A様所有





九、奴奈川硬玉大珠(全長9.60p)
この大珠は縄文後期の大珠を思い生み出したもので、
黒、白、緑のバランスの良い大珠です。
特に緑のオンファス輝石は非常に美しいです。
長者ヶ原で生まれたであろう、
奴奈川の自然を一身に纏った美しい縄文大珠です。
この玉には名前があり命名「ペトルンカムイ」(水の神)といいます。
千葉県、S様所有





十、奴奈川硬玉勾玉(全長3.50p)
この玉は我が家の「あゆき」のために生んだ奴奈川硬玉の勾玉です。
原石は水色の硬玉で日光下が一番美しく輝きます。
透明度もかなり高く、光を十分に通します。
強い北風の中で魂を込め、生まれたこの玉には名があり
命名「風馳」(ふうち)といいます。
玉作家「足往」所有



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