玉匠の道具


このページでは多くの方から再公開要望のありました
玉作 工人使用の攻玉、玉作道具達を紹介いたします。

現在、玉作 工人が使っている砥石は奴奈川産硬質砂岩を含め
極めて特殊なものを使っており
一般的には入手出来ないので、ここでは以前使っていた一般的
に購入可能な砥石を掲載しております。



硬玉製台石、硬玉、軟玉製敲石

海岸転石以外の原石を玉材にする際の最初の加工工程である、
「破砕」に使用する台石と敲石です。
破砕を終えた石の高いところ(山の尾根)を敲石でコツコツ叩いて減らします。

石材により使い分けを行いますが、硬玉製であれば汎用性は充分です。





平砥石、筋砥石、内磨砥石

荒破砕の終わった原石を砥石で加工する際の砥石です。
ニ平面作成用の平砥石、玉の背を磨く筋砥石、玉の腹を磨く内磨砥石です。
本来は硬質砂岩製の砥石が最良ですが、なかなか手に入らないので、
玉作 工人は普段カーボランダム製の砥石を使っています。

左から二本が荒筋砥石、内磨砥石、平砥石


平砥石の使い方
破砕、敲打を終えた石の加工基準のニ平面を砥ぎ出します。
砥石は普通の平砥石で荒、中の二本です。
この工程には仕上げ砥石はありません。




内磨砥石の使い方
長いストロークでゆっくりと研磨し、
大体の形になったら砥石粒度を替えて更に研磨。
使う砥石は、荒、中、仕上げの3本です。




荒筋砥石の使い方
位置を時々変えながらゆっくりと研磨し
大体の形になったら砥石粒度を替えて更に研磨。
使う砥石は、荒、中、仕上げの3本です。






荒筋砥石、内磨砥石と玉の関係
こんな感じで研磨を行います。








三、穿孔用管錐、舞錐

ここでは外形整形、ニ平面整形を行ったあとに行う「穿孔」道具を紹介いたします。
先ず初回は硬玉大珠、硬玉勾玉に使用する管錐を紹介いたします。


「大珠」用、銅製、鉄製管錐(直径6ミリ)
上が鉄製、下が銅製管錐です。
穿孔する石の質、厚さなどで使い分けを行います。
軟玉の場合、強い交差組織に対抗するため、ほとんどの場合銅製の薄い管錐を使います。
銅製の管錐は刃厚が薄いため、剛性の問題から穿孔中に芯ブレが発生し、砥糞が
「へそ」を圧迫、欠損を招く恐れが高いため、砥糞つまりを防ぐ事を目的に
錐横に初期砥糞排出用の穴が明けてあります。

最近は女竹の良いものや、廉竹の良い物がなかなか手に入らなくなってきて
いるので、煤竹で棒錐を作って穿孔することもあります。






「勾玉」用、銅製管錐(直径3ミリ)

穴経の小さい勾玉の穿孔は、銅製管錐を使用します。
(更に小さな穿孔は、竹製棒錐を使用し両側穿孔を行います。これは後述)
大珠より小さい穴のため剛性確保の必要から、長さを短く作ります。砥糞の排出に
細心の注意が必要のため、交差するように穴を開けてあります。
勾玉の場合、直径3ミリ以下の穿孔は舞錐を使った管錐穿孔では極めて困難です。






銅製、鉄製管錐先端形状
各管錐の先端形状と銅製管錐にて発生した穿孔「へそ」。



舞錐
今まで紹介してきた管錐を装着し、穿孔を行う時に使用する舞錐です。
充分な大きさの「弾み車」を出来るだけ管錐の近くに装着する事が、ブレによる
穿孔失敗を防ぐ事に有効です。舞錐による右、左の交互回転が穿孔砂の慣れ、
錐、石の研磨面の慣れの発生を防ぎ、極めて効率的に穿孔が可能です。
この効率の良さは電動ドリルも凌駕します。


玉作工人使用の大舞錐(大珠、大勾玉用)
装着された6ミリ銅製管錐と廃砥石製弾み車。錐軸長60p、把持部長47p
大きな玉の重穿孔に使用します。





玉作工人使用の小舞錐(勾玉、丸小玉用)
装着された2.5ミリ鋼製管錐と鉄平石製弾み車。錐軸長62p、把持部長53p
小さな玉の管錐穿孔、棒錐両側穿孔に使います。
軽量に作る事と、重い弾み車、細い紐で高速回転を生み出せます。




小舞錐に使用の長野産鉄平石の弾み車!
シンクさんありがとうございます。
薄くて重く、加工が容易、これは蝋石の比ではありません。

打ち割り、荒加工完了。重さも充分!



仕上げ研磨完了。




長野産鉄平石の弾み車の装着状態
写真左が錐側です。回り止め、ブレ止め、錐の抜け止めのため
弾み車の上下を充分締めつけてあります。





上記の玉匠の道具達によって管錐穿孔が行われます。
真直ぐに開けられた穴はこれらの道具なくしてはできません。
古代人の考えた道具達は、時に現代の道具をも簡単に凌駕してしまいます。

管錐穿孔は舞錐の他、穿孔砂、位置決め板2種類を使います。



穿孔位置決め板
管錐穿孔時、管錐の位置を正確に固定するために使用します。
この位置決め板には、数種類の太さ、種類に対応出来る穴があいています。

上:管錐、棒錐位置決め板
(穴は左から3ミリ管錐用、2.5ミリ棒錐用、6ミリ管錐用)
下:穿孔位置決め枕木板




穿孔位置決め板の使用状態
穿孔準備の整った、荒整形、ニ平面出し完了し装着されたヒスイ
大珠などでニ平面を作らない場合は、台木をはさんで安定させます。





上記の管錐、棒錐位置決め板を使用しないと、管錐、棒錐穿孔は出来ません。

石川県vhoさん考案の穿孔位置決め板


vhoさん考案の穿孔位置決め板です。
木製では位置決めが難しかったところを透明なアクリル板を使い製作されています。
古代技法と現代技術の融合です。

vhoさんによると、この穿孔板のポイントは、

1.アクリル板の穴はまっすぐに開ける
2.使う錐に合ったパイプを取り付ける
3.鉄パイプをきちんとアクリル板のツラ位置に取り付ける
4.錐の破損防止のため穿孔砂を入れすぎないこと
だそうです。

玉作 工人が写真から判断するに、穿孔砂の使用量が適量で技術的に完成の域に入っています。
舞錐と管錐の精度が出ると、写真のような少量の穿孔砂でまっすぐの孔を穿つ事が可能です。
写っている玉は「玉作族」に掲載されているvhoさんの
「朧」(おぼろ)です。

   vhoさん考案穿孔板               見事に穿たれたガラス(12mm厚)

  


穿孔砂
穿孔砂は基本的にカーボランダム砥石カスと石英砂(奴奈川の川砂)
粘度を上げるための土粘度を混ぜ合わせて作ります。
対象石の質、硬度、粘りにあわせて最良の調合を行います。
その種類は無限にあり、ここばかりは経験とカンの世界です。
玉作 工人もこの技術確立に一番時間がかかりました。
使用の要領は、平板上で水を混ぜて板を傾けたときに流れない程度
が最高の「あんばい」です。


乾燥状態


最高の「塩梅」





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