沼名河之 底奈流玉



玖沙訶乃玉璽

「玖沙訶坐大神乃美須麻流」

一連の「玖沙訶乃玉璽」古式御統完成を持って一段落となります。

玉作工人は古式職人故、古の「威」の連続に全てをかけます。

これは古からの理、そこになんら理屈はございません。

この美須麻流は古墳前葉から中葉の玉佩用最盛期に作られた形式で、
古代官営玉作工房による最高水準の業物となります。

一連の「玖沙訶乃玉璽」は古同様、一業二式を常とし兄弟有り、
材、道具、意匠規格、整形、研磨、完成仕上げ迄全く同じです。

親玉は奴奈川貴流水紋青軟玉、脇玉は二種二組の四珠の「蒼甕乃碧威」
親玉護りとなるのは異形水晶管玉及八角切子玉。

脇丸玉は10ミリ黒硬玉十珠、肩部を結界として硬玉線刻棗玉、
後丸玉は10ミリ貝白玉を組み上げてあります。

わたくしの玉作人生でも今回二回目、八角は六角に比して技能的に難しく
七年前の2014年に一式作らせていただき二度目になります。

全体から発する「威」は各玉、各石、万物に宿る「物乃怪」の霊威、
恐ろしいまでの力をその身に湛えて、全体が明るく調和する、
「大物主の霊威」そのもの、正に多くの美麗な玉を連ねた
「大神乃
美須麻流」でございます。


「玖沙訶坐大神乃美須麻流」





























親玉
奴奈川貴流水紋青軟玉弓型大勾玉
「渡津海乃龍威」

この通り青き中に赤い脈と流水紋を持つ軟玉です。

青石ではごく稀にこの色合いはあるのですが、
非常に珍しく、わたくしも初めてでございます。











奴奈川高品質碧玉四珠組勾玉
「蒼甕乃碧威」










大倭八角切子玉

「玖沙訶乃美須麻流輝威」

八角形は砥ぎ出しが極めて難しく、手業による平面の集合体では
古より最高難度のため出土数が極端に少なくなります。

穿孔は平錐打撃回転穿孔、仕上げは砥石を選び半透明といたしました。













異形水晶管玉

この特殊形状仕様の出土品類例は極めて珍しく線刻四角管玉水準です。

穿孔は切子玉と同工程ですがこちらは角無研磨仕上げで磨き上げます。

形式的には親玉の「威」護りを司る玉となります。





 明瞭に見える、「平錐打撃回転穿孔」のX字型線条痕





奄美「夜久」貝丸玉
「夜久乃光彩」

奄美地方の巻貝の材から10ミリ丸玉を砥ぎ出しました。

伝統螺鈿細工の材と共通材ですが、貝故材料靭性が特殊で
木砥石低速研磨の新たな工程を組んで攻め込みました。

優しい光がとても魅力的な丸玉でございます。













硬玉丸玉
白、黒、緑の硬玉から丸玉を砥ぎ出しました。















玖沙訶乃玉璽





















玉作 工人  拝